コラム

2023.10.11

歯列矯正治療と楽器(吹奏楽)

今回は、歯列矯正治療をしながらでも楽器の演奏や、吹奏楽部に入っても問題ないか?についてお話していきます。つい先日も、歯並びの相談に来院された小学高学年の保護者の方が「中学で吹奏楽部に入部したいと言っているので矯正しながらでもできるか聞きたい」とおっしゃっていました。文化部の中でも最近は特に、吹奏楽部が人気なようで当院に通われている方の中でも吹奏楽部に入部して楽器を演奏しておられる方が多くいます。そして必ず聞かれるのが、楽器の演奏は可能ですか?中学生や高校生になったら吹奏楽部に入部をしたいと思っていますが、矯正の装置が入っていても演奏できますか?吹奏楽部の顧問の先生に、歯並びの矯正治療中なら矯正の先生に楽器の相談をするように言われましたが大丈夫ですか?止めておいたほうが楽器はありますか?など聞かれることがあります。吹奏楽部に入ると学校に置いてある楽器ではなく、新しく自分専用の楽器を購入するご家庭も多いので、事前にしっかり確認をする必要があります。私の家族も吹奏楽部に入っていましたが、入部後に楽器を購入しました。かなり高額なお買い物になりました。今、歯列矯正治療中の方や、これから治療をお考えの方で楽器(吹奏楽)を演奏される方の参考になればと思います。

吹奏楽部でも装置はできる?


基本的には、矯正の装置がついていても問題ないと思います。とくにお口を使って演奏をしない楽器(ドラム・ピアノ・ギター・ベースなど)は、歯並びの治療をしていても問題なく演奏できます。問題が出るとしたらお口をつかって演奏する楽器(トランペット・トロンボーン・サックス・クラリネット・フルート・ホルン・オーボエなど)は、矯正の装置があたって口内炎になってしまい、音が上手く出せないこともあります。また、お口と楽器が触れない楽器(バイオリン・ビオラ)などは、楽器を顎に挟んで演奏するため、顎の噛み合わせに影響が出てしまい、顎関節症になる可能性もあります。歯並びの不正咬合の種類によって避けておいたほうがいい楽器もあります。

吹奏楽部に入部するとき


中学や高校に進学してから、部活動で吹奏楽部を希望されるときは、まず矯正の主治医にご相談をお願いします。また、吹奏楽部の顧問の先生にも、歯並びの矯正をしているとお伝えください。主治医に相談し顧問の先生にお伝えしてから希望する楽器を演奏できるか確認をとることがとても大切です。最近は、希望の楽器を事前に3つほど候補をあげてから決まるみたいですが、矯正の装置がついていると演奏に影響がでることがありますので注意が必要です。

装置をつけることで影響があること

①音が出しにくい

お口を使う楽器の演奏は、楽器を吹くときの舌の動き・唇の動き・頬の動きなどとても繊細な動きをして音を奏でます。歯並びの矯正の様々な装置は、お口の中につきますので慣れるまでは音(特に高音)が出しにくくなります。楽器によって慣れる間隔は変わります。また、矯正の為に抜歯をした場合は、抜いたところから空気が漏れてしまい音が出しにくくなることがあります。

②装置があたって口内炎になる

ワイヤー治療をしている場合は、唇に楽器を押し付けて吹くような楽器(トランペットやトロンボーンなど)を吹くときに、唇を強く楽器のマウスピースに押し付けるため、口内炎になりやすくなります。お渡ししている透明のワックスをつけることで口内炎は防ぐことが出来ます。

③装置を外したあとも影響がでる

矯正の装置をつけての演奏に慣れていると、今度は装置を外した時に違和感があり演奏に影響がでることもあります。また、矯正の装置が外れても保定装置をつけないといけません。装置を外したあともしばらく慣れるまでは、演奏に影響がでることがあります。

不正咬合の種類と楽器の種類


吹奏楽で使われる楽器には、木管楽器と金管楽器がありそれぞれにシングルリード・ダブルリード・リップリードなどがあり、不正咬合の種類によっては避けたほうがよいものがあります。
例えば、吹奏楽部で人気の楽器のクラリネットやサックスは、シングルリードの木管楽器ですが、吹くときに下の唇を軽く巻き込むようにして下の歯の上にかぶせ楽器のマウスピースを置き上の前歯にあて上の唇をさらに覆いかぶせるようにして演奏します。上顎前突(出っ歯)や開咬の不正咬合があると歯並びを悪化させるうえ、矯正治療中の場合は治療の妨げになることもあります。また、トランペット・トロンボーンは、リップリードの金管楽器ですが、吹くときには、楽器のマウスピースを唇に強く押し当てるため、叢生(歯並びがガタガタ)や過蓋咬合(噛み合わせが深い)の不正咬合の場合は、口内炎になりやすいうえにうまく楽器が吹きにくいなど影響がでることがあります。

矯正装置で楽器が吹けない?


当院の患者さんのお話ですが、「ワイヤー治療を始めた後に吹奏楽部に入部しトロンボーンを吹いているが部活動に支障がでる。装置にあたって血がでて口内炎になってしまう。装置を一旦取れないか?」と、おっしゃる患者さんが一人だけおられました。保護者同伴で相談をしこの患者さんは、ワイヤー治療からマウスピースでの治療を選択しその後は問題なく部活動が出来ていました。楽器や付けている装置によって、支障がでることがありますので、矯正治療の主治医にご相談をお願いします。

マウスピースでの治療なら影響がない?


歯の表側に装置がつくワイヤー治療よりも、取り外しが可能なマウスピースでの治療のほうが、楽器を演奏するのは影響がないようです。矯正の装置と楽器があたってできる口内炎のリスクも少なく、舌・唇・頬の動きにも影響が少ないと思います。ただし、マウスピースでの治療は全ての方の不正咬合に適応していないため、マウスピース治療が行えない場合があります。

こんな時はお知らせください!


歯並びの矯正治療中でも、楽器を演奏することは問題ありませんが、ワイヤー治療中にワイヤーを交換したときの痛みがでてしまう、新しい装置をつけると違和感がさらに増してしまうことがあります。コンクールなどの大会の前や、定期演奏家などの発表会の前などはさけて治療することは可能なので、お気軽に矯正治療の主治医やスタッフにご相談ください。