コラム

2024.10.23

ブラックトライアングルとは?

みなさん、「ブラックトライアングル」という言葉を聞いたことがありますか?

ブラックトライアングルとは、歯と歯の間と歯肉に囲まれた三角形の黒い隙間のことをいいます。

ブラックトライアングルは、前歯部にできることが多く、特に下の前歯部にできることが多く、そのような歯肉の隙間は回復しづらいともいわれています。

ブラックトライアングル

○ブラックトライアングルができる原因

①加齢

加齢とともに、歯を支える骨(歯槽骨)や歯肉の細胞の活性は低下します。それにより、骨の高さが低くなり、歯肉が下がってしまうことでブラックトライアングルができます。

②歯周病(歯周炎)

歯周病とは、プラーク(歯垢)の中の細菌によって歯肉に炎症を起こし、歯を支えている骨(歯槽骨)を溶かす病気です。炎症が進行すると、歯を失う原因にもつながります。その炎症で歯を支えている骨が溶け、歯肉が下がることでブラックトライアングルができてしまいます。

歯周炎の特徴は、歯肉の色が赤紫色で、歯肉が腫れていて、歯磨きをすると歯肉から出血し膿が出ます。歯周ポケットが深くなり、歯を支えている骨(歯槽骨)が溶け、歯肉が下がって歯が長く見えます。

歯周病の原因はプラーク(歯垢)であり、そのまま放置すると硬くなり、歯石というものに変わります。歯石の中や周りに細菌が入り込むことで、より歯周病を進行させてしまいます。また、歯周炎が治療により改善し、腫れていた歯肉が引き締まることで、ブラックトライアングルができることがあります。正しい歯磨き方法で、お口の中のプラーク(歯垢)を取り除き、歯石は歯ブラシでは除去できないため、かかりつけの歯科医院で定期的にクリーニングをしてもらいましょう。

③矯正治療

歯列不正で歯並びがガタガタの場合、歯が重なって生えている部分の下の歯槽骨が十分でないことが多いです。歯が重なっている部分は、歯磨きがしづらく、歯磨きでは除去しきれない食べかすやプラーク(歯垢)が歯と歯の間に溜まっていくことで、歯肉が炎症を起こし、腫れてしまうことがあります。

そして、歯列矯正で歯並びが良くなり、歯のガタガタが解消され、歯磨きがしやすくなり、腫れていた歯肉が引き締まり、歯肉が下がることでブラックトライアングルができてしまうことがあります。

また、当院では矯正治療を開始する前の診断でのご説明の際に、矯正治療に伴うリスクとしてブラックトライアングルができることがあることを事前にご説明させていただいています。治療が必要な場合は、他院で治療をしていただくことがあります。

④歯磨き

歯肉が下がる様子

硬い歯ブラシやゴシゴシと力強く磨いたり、間違った磨き方をしていると、歯肉が下がり、ブラックトライアングルができてしまうことがあります。また、歯間ブラシの大きさや挿入角度が間違っている場合でも、歯肉が下がることがあります。強いブラッシング圧や硬い歯ブラシの使用を長期間続けると、歯肉が下がったり楔状欠損(くさびじょうけっそん)を起こし、知覚過敏を併発することがあるので注意しましょう。また、クレフトやフェストゥーン、擦過傷を生じることもあります。

歯肉炎などで歯肉から出血がある場合や知覚過敏がある場合などは、やわらかめの歯ブラシを使用しましょう。

楔状欠損(WSD)(くさびじょうけっそん)

楔状欠損(WSD)(くさびじょうけっそん)

歯と歯肉の境目が削れてくぼんでいるところがくさび状に見えることから、くさび状欠損といいます。くさび状欠損は、主に犬歯や小臼歯によくみられます。歯ぎしりや食いしばりなど噛む力が強い場合、歯と歯肉の境目に力が集中することで、歯の表面が傷ついてしまうことがあります。また、硬い毛の歯ブラシを使用したり、強い力でゴシゴシとブラッシングをしたり、粗い研磨剤入りの歯磨剤を使用していたりするなどの場合が長期間続くことによって、歯の表面が徐々に削られてしまうのが原因で起こります。エナメル質が削られると象牙質が露出します。象牙質が露出すると、神経に痛みや温度が伝わりやすいため、冷たい飲食物を口にした時に歯がしみる知覚過敏(象牙質知覚過敏症)を併発することがあります。

冷たい飲食物を口にした時に歯がしみるイラスト

○治療方法

IPR (Interproximal enamel Reduction)

・IPR (Interproximal enamel Reduction)

IPRとは、隣接歯間のエナメル質を微量削合することです。ディスキングやストリッピングと呼ばれることもあります。IPRの専用のバーやストリップスというヤスリで歯の大きさや形を整えます。IPR後は歯間空隙ができるため、その隙間を閉じることでブラックトライアングルを小さくさせます。しかしIPRは、削る量に限度があるため、完全に隙間(ブラックトライアングル)を閉じることができない可能性があります。

IPR (Interproximal enamel Reduction) IPR (Interproximal enamel Reduction)

このIPRは、矯正治療でも行われます。歯を排列するためのスペースを確保するためにも行われます。特に前歯部に行われることが多いです。IPR後は隙間ができるため、その隙間に食べ物が挟まりやすくなります。特に繊維質な食べ物や鶏肉などが挟まりやすくなります。食べかすが歯と歯の間に挟まったままだと隙間を閉じることができないため、フロスや歯間ブラシなどを使用することが大切です。

IPRは1歯につき削る量に限度があります。1歯あたり、約0.5㎜まで削ることができます。削るのは、エナメル質の範囲内なので歯がしみる知覚過敏が起こることは比較的少ないです。

また当院では、IPRを行った後にフッ素塗布をさせていただいています。フッ素塗布が必要でない場合は、気軽にスタッフへお申しつけください。

もし、ブラックトライアングルが気になるという方は、近くの歯科医院やかかりつけの歯科医院へご相談してみてください。